上映会「原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち」(2)

 

上映のパンフレットの序章には、原発が爆発した瞬間の写真とともに、「原発の運転は許されない」とされる理由が明快に記されている

映画では、原発をとめる農家の方々の姿も描かれます。福島原発事故以来、エネルギーを原発から太陽光発電含む再生可能エネルギーに切り替えた人たちがいました。そして、太陽光発電事業を仲間とともに、一から作りあげたいと事業を立ち上げた福島の農家の方々がいました。二本松営農ソーラー&Sunshineの立ち上げメンバーで事業を運営している近藤恵さんもそのひとりです。「全てのエネルギーを自分の地域で、自分たちの手で作り上げられる」と言います。その言葉の背景に見える思い、原発エネルギー継続に対する強い意思表示、実体験からこその言葉が響きます。

  彼らは、今、ソーラーシェアリングという事業形態をとり、再エネ事業を行っています。ソーラーシェアリングは、太陽光発電事業と農業を同じ敷地の中で営む方法です。畑には太陽光パネルと一緒に、シャインマスカットなどのぶどうが育っています。いま育っているのは7種類・98本。これらの樹のサポーターを募り、樹の名付け親になるなど、みんなで楽しめる企画を進めています。

 上映会では、ゲストと参加者との質疑応答の時間も設けられました。そのため、深い社会状況を理解することができました。ゲストは監督の小原浩靖さん、太陽光エネルギー事業に携わる近藤恵さん、遊佐町で共同開発米や再生可能エネルギーを使った発電に携わる池田恒紀さん。


会場からの質疑に答えるゲスト。左から近藤恵さん、池田恒紀さん

 

質疑応答で、私たちは今後どのような太陽光発電事業とどう関わればうまくいくのかについて問われると、全てをゼロか100かで考えるのではなく、事業経営しているのはどんな人たちなのか、どんな思いで経営しているのかをみていくのも良いとの回答が返ってきました。地元がしっかり絡んでいるかどうかというのも基準になるそうです。

私たちは、一人ひとりが、未来に残したいと思うものが何であるのかを考え、そして今後私たちはどんな人と共に進みたいのか。それらを考え決めていくことが大切になってくると感じました。



求めに応じてパンフレットにサインをする小原浩靖監督と近藤恵さん

 

最後に、パンフレットに載せられた弁護士の方の言葉を紹介します。「再生可能エネルギーに見る未来、そして脱原発へ向けて裁判を続けていくことは、車の両輪」と表現した一文。私にはこの言葉が、これからの時代を象徴しているかのように感じられました。原発ゼロと再エネ推進、この2つを同時に一気に勢いよく進めていくことがとても大切だそうです。この映画には、まさにその兆しが表現されてます。樋口元裁判長が大飯原発の再稼働をとめたのち、農家の方々や弁護士の方々が団結しつながり始めています。再エネ事業も連携が始まり各地に広がりを見せています。人生はいつだってチャレンジの連続。映画に描かれた彼らと同じように、私たちも希望に向かってチャレンジし続けることができます。いま、各分野でのつながりが、可能性の扉を大きく広げています。今回一番印象に残ったのは、集まった参加者の関心の高さ。そのひとつひとつの関心が、今後重なりあい繋がり、形となって、古い時代に終止符を打ち、新時代の扉を開いていくのだと思いました。

(環境平和委員 田中友貴)


*大飯原発3,4号機運転差止請求の判決文は、裁判所のウェブサイトから閲覧できる



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